ミュージカル「スタミュ」スピンオフ team柊 単独公演『Caribbean Groove』
本当に本当に素晴らしい公演でした。『4日間7公演』という事実に素で「なんで?」と思ってしまうくらいに、スタミュを知っているすべての人に、スタミュを知らない人にも見ていただきたい公演でした。実際にアンフィシアターで観劇できたのは幸せな経験でした。
1.スタミュによせて
スタミュ視聴のきっかけはニコニコ動画のアニメランキングでやたら見かけたから。当時、松林だったランキングで再生のわりにコメントの多い公式配信だった。正直私は馬鹿にしながら見ていた。「ねーよwww」と。星谷くんの自信満々な行動が見ていて恥ずかしくなり、2幕の「犯人はこの中にいまぁーす!」の場面は堪らず一時停止した。
意識が変わったのは5,6幕。アヤナギ・ショウ・タイムを踊る彼らに目を奪われた。キャラクターに・・・というよりすべて手書きで描かれたステージに・・・と言った方がいいかもしれない。
そこからの行動は早かった。12週連続リリースされたCDを買いあさり、人生で初めてBDを全巻を買い、好きなキャラはヘッドホンの彼と言い出し、設定の考察を知はじめ、聖地巡礼もして、スタッフトークショーには必ず参加し、多田監督・ハラダさん・くまのさん・六ッ美さん・杉本さん・藤平さんにお手紙を書く・・・などなど。今思い返しても自らの変化に驚きを隠せない。
2.スタミュミュによせて
あれは忘れもしない2016年11月5日。AGFで発表されたミュージカル化。その時、私は頭を抱えていた。ほぼ初対面のスタミュの女たちに囲まれて「まじかー。2.5かー。まじかー・・・。」を繰り返していた。
2.5に対する気持ちは苦手意識というよりも、個人的に高額であるという点とお世辞にも歌がうまいと思えない事の方が大きかった。高額であるかどうかは個人の見解として、歌がうまいと思えないのには理由があった。情報源がニコニコ動画・生放送だったからだ。お察しである。生音源・生歌をそのクオリティのまま、生放送・収録するのは不可能だ。特に編集されていない生放送は台詞もあるためか、音楽と歌声のバランスがどうしても声の方に寄ってしまう。歌がうまいと思えない原因だった。もちろん、この発表の時点でそんなことわかるはずもなく、私は頭を抱えていた。
しかし「じゃぁどうするの?」と言われれば「いや、見ますけどね」と真顔で答えた。理由は簡単。スタミュだから、その1点である。
そのときいた舞台観劇経験者からのアドバイスは4つ。
- 初日は見た方がいい
- 千秋楽は言わずもがな
- すると自然ともう数公演見たくなる
- チケットは抽選じゃない、もぎ取れ
この人たちはいったい何を言っているんだ???????
そう思ったのはミュミュ1stがはじまる前日まで。
3.1st
年が明けて2017年1月。キャストが発表された。月皇くんのキャストがアニメの”中の人”だった。それだけでも見る価値があった。というのも、スタミュという作品が好きなだけで、声優さんの名前も顔も、役者さんの名前も顔もほとんど知らない私にとってランズ兄やんことアーサーさんは、名前も顔もわかる数少ない役者さんだった。中の人がミュージカルでも演じる、個人的に胸熱な展開だった。
ちなみにこの日、アニメ2期ストテラの4人のキャストも発表され、アラビアンなSDキャラも公開されたこともあり、スタミュ好きにとってお祭り騒ぎな1日となった。
チケットがとれたのは2回分。中日と東京千秋楽。初めての2.5次元だった。
初日の終演後、twitterの様子がおかしい。誰もかれもがもう1度見たいと言っている。もしくは『やばい』としか呟かない。え?平気?めっちゃ怖いんだけど?語彙力どこに落としてきたの?なに?なにがあったの?いやいや、みんな見るまでそんなんじゃなかったでしょ?と不安な3日間を過ごした。
そして4月4日。観劇後
この手のひら返しである。いや、手のひら返しというより体験して初めて理解できたというか、なんというか。一言で言うと音の圧がすごい。生だからこその空気感だ。歌声を聞いて初めて配信との違いを知る。BGMも楽曲もアニメのものでスッと物語に溶け込めた。
team鳳は見れば見るほどアニメのキャラと重なっていった。華桜会が華麗に燕尾を翻すたび会場の壁に影が落ちた。台詞がなくてもブルズの笑顔がダンスが頭から離れなかった。
そしてteam柊。アニメ1期では両手(片手)を広げて終わった彼らが『綾薙祭』で『Caribbean Groove』を披露していた。嬉しかった。かっこよかった。その世界観に圧倒された。
4.スピンオフ
次の年の1月。スピンオフが発表された。予想外だった。スタミュのメディアミックスは理解しているつもりだった。アニメにドラマCD・楽曲・コミックス・雑誌掲載SS・星箱SS・イベント・ラジオ・ミュージカル。ビジュアル本やスタッフ本なんて言うのも出た。
スタッフトークショーの際、お手紙に必ずと言っていいほど『細くてもいいから長くスタミュの世界を続けてください』というようなことを書いていた。どんな展開であろうと媒体であろうと、スタミュの世界が続くことを願っていた。しかし、ミュージカルの方から『team柊』の『単独』『スピンオフ』公演なんていうどでかい展開が来るとは思っていなかった。
このはしゃぎっぷりである。 苦手意識はどこへ置いてきたと聞かれれば、「今は亡きブルーシアターへ」と言わざるをえない。
後に詳細が発表されて円形劇場と公式ペンライトに違和感を覚えるも、一度は見なければなと行った28日の昼公演。「レビューという形式は初めてだし、ペンラもない・・・ここは彼氏面スタイルで行くか」と軽く思っていた。
そんな決意も前奏とともにせり上がる舞台、お祭り騒ぎな『WILD CROWN』、そして予想だにしなかった『キラメキラキラ☆』が流れた瞬間、完全に崩壊した。なるほどこれは楽しまないと損をするやつだ、と理解した。そこからは手拍子を続け、声を出し、虎石くんに落とされる観客を菩薩顔で眺めていた。
この2か月後。配信された映像で初めて千秋楽の挨拶を見た。
ただただ衝撃だった。
5.2nd
衝撃の視聴から数日後、2ndが始まった。OVAの13,14幕の内容だ。この公演から空閑くんの役者さんが高橋さんから新里さんに変更された。人生初のキャス変だった。人生で初めて自分が追っているジャンルでキャストの変更が行われて、周りには『推しキャラのキャストが変更された人』『推している役者がミュミュから卒業した人』『その両方』という人であふれていた。
でも新里さんの空閑くんは、寂しさとかやるせなさとかを吹っ飛ばしてくれるくらいに『新里宏太の空閑愁』だった。1人だけ新キャストだった不安を挨拶の時に語っていたけど、空閑愁でいるときの新里さんのパフォーマンスはそんな不安感じさせなかった。
1stを経て成長したスタミュミュの感想は、このフォロワーさんの発言に集約される気がする。
似たようなことを楽曲のCaribbean Grooveでも思った。2ndの『柊先輩に見てもらいたい卒業セレモニーの演目』であるカリグルを歌う5人に鬼気迫るものを感じたからだ。
アニメ1期で披露されなかったカリグルがOVAで披露され、ミュミュ1stを経てレビューという形で『スタミュの世界にあるCaribbean Grooveという演目』が披露された。そしてあの挨拶を聞いた後の2ndで、柊先輩へ贈るカリグル。2次元と3次元をつなぐような2.5次元の演目だった。
2ndはスタミュミュというより、ただただスタミュそのものだった。それはもう、開演と同時に『スタミュに帰ってきた~』と思ってしまうほどに。
6.シャッフル
シャッフルレビューはチームが揃っている状態で見たい演目(エイプリルフール)だったと言うのと、S&L・華桜会単独・team暁スピンオフを諦めない・・・!と可能性を見出したくなる公演だった。
ただただ楽しい、シリアスだろうが楽しい。今まで以上にキャストと観客の距離(物理ではない)が近いように感じた。祭・・・というよりイメージ的にはカーニヴァルのただ中にいるような心地だった。でもどんなに楽しい空間でも、締めの挨拶を聞くとうるっとしてしまう。しかたないね。
そんな楽しい空間の大千秋楽で発表された。Caribbean Groove本編上演とスタミュミュ3rd。
キャスト変更のないカリグルと詳細が語られない3rd。なんとなく、ただなんとなく「3rdはキャス変あるのかな、それともまだ交渉中だからキャスト発表ないのかな」と思っていた。
7.Caribbean Groove
5月もあとわずか、物販やニコ生振り返り上映が発表され後は本番のみ!というタイミングで発表された3rd詳細。噂レベルだった鈴木さんのみならず、誰にも渡したくないとオーディションを受けたアーサーさん、そして2日後に公演を控えた高野さんの『卒業』と新キャスト、新キャラの発表がなされた。
何故このタイミングでと思いつつも、このタイミング以外にはあり得なかったと思うに至る。故にカリグルは観劇よりも見届けるという意味合いの方が強くなったのは言うまでもない。
公演当日。チケットがとれたのは初日のみ。最初で最後の航海だった。
感想を先に言うならば。圧巻。ただその一言に尽きる。
カリグルレビュー公演では舞台にteam柊がいた。学生である彼らのソロ曲・デュエット曲をやったのも理由の一つだと思う。キラメキラキラ☆は戌峰くんと卯川くんの歌だし、ハニトラは虎石くんの、ジエレは辰己くんと申渡くんの歌だ。それがカリグル本編上映ではレビュー公演の流れを踏襲するものの、学生要素を排して再構成されていた。まさにスタミュの世界の演目。舞台の上にいたのは学生でも役者でもない。まぎれもなくあの時代を生きた海賊だった。
本編上映ではレビュー公演と比べ、台詞や曲が増えた分、彼らの心の機微が鮮明に描かれた。
序盤、まだ幼さの残る16歳のクリスと13歳のアンリは、出生の秘密を知り仲間たちとの関係性を再確認することで心を成長させた。2人を見守り支えていたアルベールは唯一秘密を共有するティエラの前でのみ迷いを打ち明けた。海の上で命知らずなティエラも仲間のこととなると「あぶねぇことをさせたくねぇ」と気遣いを見せる。一人立場の違うジョバンニの心情は序盤から終盤にかけて丁寧に描写された。
そんなカリグルの世界感をより一層深くしたのが、脇を支えるサブキャラ・アンサンブル・ダンサーの皆さんだろう。ジョルジュの叫びに心が震えた。ピエールの叫びには息が詰まるようだった。アモルテの存在感と笑い声に場の空気が変わるのを感じゾクゾクした。アンサンブルを含めたレジスタンスの歌声に胸をうたれた。ダンサーのしなやかなのに力強い表現に目が釘付けになった。
クリスを演じる辰己くんの演技は、子供の無邪気さと大胆さ、(自称)船長としてのカリスマ性、海賊としての残忍さ。色々な面を持ち合わせるクリスの、その切り替えが素晴らしかった。
申渡くんのアルベールは13年もの間、責任と後悔と苦悩を抱えた物語のキーマンだ。その揺れる心を歌った『真実のゆくえ』は素晴らしかった。船を降りた自分のもとに4人が駆け付けた時の表情が忘れられない。
ジョバンニを演じる戌峰くんを見た時、聞いてはいたが今まで目にする機会がなかった演技力・歌唱力・ダンスにおける「天性の才能」を目の当たりにした。彼の演技は天才のそれだった。
虎石くんのティエラは祖国語で『陸』を意味する名を持つ。物語で唯一立場も心情も変わらない人物。仲間のためブレず構え見守り支える、彼にぴったりの役だった。
アンリを演じる卯川くんの演技は、臆病と言われようと、戦闘が苦手だろうと、根底には愛する者たちへの想いがありその思いとともに剣を振るう。序盤終盤で歌い方が変わるのも素晴らしかった。
ブラッディ・ロジャーはティエラの父亡き後、船長の不在が続き現在の5人の凄腕リーダーがまとめる海賊になった。血のつながりはなくても強い絆で結ばれている。個々が他の4人を見つめるときの、目を細めた愛おしそうな表情がとても好きだ。
カリグルは2ndで完成したのだと思っていた。完成していたと思う。ただ本編上演がさらに高みへ行ったというだけだ。5人が5人ともキャラとキャストと役者とが重なったような・・・。そんな公演だった。本当に素晴らしかった
終演後、客席のため息と共に明るくなる劇場。ざわざわと思い思いの感想が飛び交う瞬間。じわじわと終わったんだと認識し始める。この瞬間がとても好きだ。
たった一度だけの航海。終わってしまった喪失感と、今日しかこの空気感を味わえないのかという悔しさ。そして、千秋楽は配信で必ず見届けようという決意を胸に、座席がら大量に膝と足元に落ちた落下物を降りてきた後方の皆さんに配っていた。海のように青いテープには5人をモチーフにした髑髏が描かれていた。
8.おわりに
team柊はアニメで掲げなかった海賊旗をミュージカルで掲げた。1stで掲げられた素の髑髏はレビュー公演でクラウンを冠した。そして本編上演。クラウンをバイコーンに変えた海賊旗はteam柊のものではなく、血染めの海賊の旗となった。
彼らが最後に歌うStarship Runwayの歌詞にある
『一緒に悩んだ昨日にThank you 認め合う視線 俺たちは(僕たちは) 永遠に(チームさ) いつだって最高が似合う』
『苦しいときは歌って スター・オブ・スター 帆を上げよう 可能性巻き上げて 挑戦という名の旅へ』
という部分は、海賊の高校生の役者の、どの立場の5人にもピッタリの内容に思う。
この公演をもって虎石くん役の高野さんは卒業する。それでも高野さんの虎石くんや5人が演じたteam柊が最高だったことに変わりはない。そしてteam柊はスターオブスターだ。これからも進化を続けてほしい。最高のteam柊を見せてほしい。例え誰が離れても。だからこそ、新キャストの高本学さんには拳に物を言わせて全力で殴り込んでほしい。そんな3rdを見てボジョレーコピペばりにteam柊を讃えたい。
カリグル本編上映を終えて、アニメで言う1期・OVA時空が終了した。3rdはアニメ2期からのストテラ組がやってくる。なんとなくだが、カリグル観劇後「スタミュミュが一区切りした感」が強かった。3rdだがスタミュミュ2章という感じ。だから新たな気持ちでスタミュミュでの星谷くんたちの成長を見届けたい。
まずはチケットをもぎ取ろう。